山と旅と私

四季を通じて登山を楽しみ、沢、岩、海岸線、そして街や雑踏も楽しむアクティブなライフスタイルを紹介します。

年末 冬の明神岳 

2017年の年末山行は2泊3日、明神岳1~5峰を目指すことにした。

12月29 日 上高地はチラチラ雪。岳沢登山口からはトレースが付いていてホッとする。これがラッセルだったら、もっと低い標高がテン場だったはず。南西尾根の先行パーティは2 人で途中テント泊。 我々はさらにその先2100m付近にテントを張った。

天気は回復しそうになく、深夜もテントが揺れるほどの強風。3 人ともロクに眠れず。


30 日 朝3 時半起床。風はないが樹林帯で星はわからない。どこまで行けるか見当もつかないが、せめて稜線には出たい。

この南西尾根は大変な急登である上、リッジが所々長く続き、積雪は膝上、先行者なし、後から人が登ってくる様子もない。 樹林帯を抜けたところで穂高連峰上のカシオペア座を仰ぎ見ることができた。 出発から3 時間で稜線近くに到達。


唯一平らな5 峰台地である。計画ではこの手前でテント泊だが、全て背負ってここまで来るのはかなり厳しいだろう。


5 峰から2 峰まで、トレース、目印、ルートファインディングで歩みを進める。天気は文句なしの快晴!!海外の山かと思うような岩と雪の景色が広がる。 2 峰手前の休憩で残り時間とメンバーの体調確認し、「行くべきでしょ!」と、リーダーの心意気にテンションが上がる。


2 峰の下りと登りがこの山行の核心部。過去の他パーティのブログを見るとここを2 回に分けて(2 本ロープ使用)、懸垂下降しているが、我々は50mシングルを途中でフィックスして2区間に分け1・2 峰のコルまで降りた。1 峰までは空身で登り、いつも憧れで見ていた主峰の頂で感動を味わった。

帰りは元来た道をたどり、5 峰下の樹林帯が始まる所で冬毛の真っ白なライチョウに出会えて心が和む。 南西尾根の急斜面2ヶ所は懸垂下降し、ゆとりを持ってテン場着。


31 日 7 時過ぎにテント撤収して下山。大正池で後ろを振り返ると、峰々は雲のベールで覆われてしまっていた。


今回は好天に恵まれ、岳沢登山口からのトレースに支えられた。いい形で2017 年を締め括ることができたと思う。

初冬八ヶ岳 天女山

いよいよ冬山シーズン到来だ。その初めに寒さに慣れ、装備を確認したりする準備山行として日帰り登山を楽しんできた。

八ヶ岳赤岳主稜の東側には、杣添尾根、県界尾根、真教寺尾根、天狗尾根とあるが、今回登った尾根は長い割には無名のようだ。


女山があるのだから、なんかあってもよさそうなのにと心の中で独り言。
天気は文句なしの快晴。高度を稼ぐごとに目を楽しませ、心躍らせてくれる。パノラマ風景のお手本だ。

一番気にしていたのは雪のこと。 約1週間前の蝶ヶ岳で予想外の積雪に驚き、ワカンは必須と思い込んだ。


ところが、最近の降雪のあとはなく、数センチの積雪が固まって氷となり、アイゼンの出番となってしまった。それも、氷→土→氷→土、、、とアイゼン泣かせ。


時間切れで権現岳には行けなかったが、シーズン最初の山行としてちょうどいい足慣らしになったと思う。

 

小坂田公園5:45 集合―天女山入口ゲート前7:00- 三ツ頭11:30―12:00― 天女山入口ゲート前14:45

西穂高岳―奥穂―白出沢―新穂高温泉

前日まで天気に気を揉んだ。「西穂高岳まで行って降っていたらやめようか・・・」なんていう会話をしていたくらい。


実際は、寝ている間に少し降ったが夜明け前は満点の星空。 草露に足を濡らしながら登り始めた。 独標を超えると本格的な岩場のルート。石を落とさないことと3 点確保をしっかりするのはもちろんだが、ルートファインディングも時として必要になる。そしてライト&ファストを意識して、テント泊だが荷物は15 ㎏以下にした。


普段、クライミングの練習をしているせいか、足の置き場にあまり不安なく行けてよかったと思う。ハーネスは念のため付けたが、はっきり言って不要。念のため予備ロープと捨て縄があれば安心。 ほとんど霧で遠くを見渡せなかったが、
ジャンダルム手前で青空が広がった。前と後ろを見ると一瞬言葉を失い、

「こんなとこ来たの? あそこ登るんかい?」

と、感動なのか不安なのかよくわからなくなってしまった。
ジャンダルム上では天子さまがお出迎え、一息ついてしばらく行くと最後の難関「馬の背」だ。ここは岩登りの基本さえ守れば通過できそうだ。ただ、下りだったり濡れていたりすると怖いだろう。 昼過ぎに奥穂高岳山頂。珍しく4 人しかい
なかった。

山荘に着いてテントを張ってからはノンビリ。ボクは贅沢にも小屋の食事にした。それにしても様々な所で変化や進化を感じる。山荘ではクレジットカードが使えて携帯の充電器もある(1 回200 円)、トイレは清潔。そしてテントのシングルが多数。かつての7-8 人用のドームテントなんてどこにあるのやら。4-5 人用だって珍しい。


翌日の天気予報は、午後から下り坂、雷の恐れもあるとのこと。それはそれとして、心理的なことも言ってしまうと、今日でメインルートを終えてしまい、面白味は下がる。天気を気にしてまで行くかな。。??と2 人そろって下山モード。

それなら、積極的下山?にしようということで山小屋の人にルート情報を聞き、大丈夫そうだとわかったので、白出沢を下りてみることにした(上高地側へ降りると時間がかかるのは言うまでもない)。

2 日目 日の出を拝んで5 時に山荘前を出た。私たち以外に下る人はいない。一見ガラ場を行くように見えるが、道や目印がしっかりしているので安心。大きい石をよくここまで安定させられたなと感服。雪渓を吹き下ろす風が涼しくて気持ちいい。


荷継小屋跡を見て、先人の働きに信じられない思いになる。要は下から担いできた荷物をここからまた別の人たちが担ぎ上げる中継所だったか、それとも同じ人が宿泊したか?。。。


沢の流れる音がはっきりし始め、クマの出そうな樹林帯へと一気に標高が低くなった。沢のヘリについた道は、黒部下の廊下の予行演習の感じ。 変化に富んでるな。 白出沢を渡るともうそこは普通の登山道。

ひたすら下り、ロープウェイに乗って、あとは駐車場へ。 9 時半鍋平着。


追記 50 年前の1967 年8 月1 日 西穂高岳独標付近で松本深志高校の生徒 落雷事故。

合掌

1 日目 3:40 西穂高山荘 – 5:40 西穂高岳 – 8:00 天狗の頭 – 8:45 天狗のコル – 10:30 ジャンダルム
- 11:50 馬の背 – 12:10 奥穂高岳 – 12:50 穂高岳山荘 (9 時間10 分 休憩含む)
2 日目 5:00 穂高岳山荘発 – 6:30 荷継小屋跡 – 7:10 白出沢渡渉 – 9:00 ロープウェイ乗車 – 9:30P (4 時間半)

道迷いに備えて 緊急露営(ビバーク)訓練

歩けば何ていうことはない里山ルートなのだが、それであるが故にけもの道、作業道、廃道が混在する。キノコ採りで行方不明になるのもよくわかる。

そして、リーダー以外の3 人はGPS を使わず、地図とコンパスしか使えないという条件
で歩き、見事にルートを間違えた。 (リーダーも過去に数回間違えたらしい)

 

以下、気づきや学びのメモ
・尾根が分かれるところや頂点では頻繁にコンパスを振る。
・7mm×10mの細引きはいろんなことに使える。個人装備として必要。
・短い距離なら10mロープを半分にして幹などに通し、末端結ぶ。その中に
カラビナ通して歩けば滑っても最小限で済む。初心者向け
・訓練山行では、もし自分がリーダーなら、、、と想定して歩く。
・地図アプリとして、YAMAP ジオグラフィカが今のところおすすめ
・ツエルトの張り方・・・あらかじめ小カラビナと細い紐を用意 
・非常食は気持ちが安らぐものを(ポタージュスープ、自分の好物)
・3 畳の広さのブルーシートで簡易シュラフ (写真参照)
・レスキューシートはワサワサ音がしないものを!
・もし、本当の道迷い&ビバークならどんな気持ちになるか?
→→→ 心細さ、(リーダーなら)申し訳なさ、簡単なルートで迷ったという情けなさや恥ずかしさ

 

技術的な訓練もさることながら、心理的訓練もできたことは今後に役立つだろう。

 

大杉谷渓谷 桃の木山の家から七ツ釜へ

松本から大台(伊勢)まで高速で約4 時間。道の駅から予約しておいたマイクロバスで登山口までさらに1 時間半。 平日にもかかわらず満員なので人気コースなのだろう。
三重県大杉谷一帯はキャンプ禁止なので原則小屋泊まり(沢登りではビバークするが)。

今回はピークハントではなく、渓谷を歩く山旅。標高も450m前後を歩いてゆく。 地形は急峻かつ多くの滝、渕が見られ、吊橋も頻繁にある。渕はエメラルドグリーンで深さはどれほどだろう。

信州人にはなじみの薄い嵓(山かんむりに品で「くら」)という字が時々ある。 断崖絶壁のことを指すのだとか。

さらに新鮮に映るのが照葉樹の森。ヤブツバキとかシラカシなんて暖かい所の証拠。さらにツガの大木(径1m近い)まであった。そしてヒノキが岩を抱くように生えていたのも珍しい。 肥沃な土ではなく、岩が多い中でここまで豊かな森が育つのは、温帯多雨のおかげだろう。

上流部で時折聞こえてくるのはカジカガエル。夏の始まりなんだなと思う。
今回は荷物も軽くて行動時間も4 時間程度だから、一生懸命ガツガツ歩くのはもったいない。地形や植物のことをゆっくりゆっくり味わい、五感を磨くような山歩きが最適だ。

しかし、転落注意の看板がしつこいくらいにあった。一つ必要な技術を上げるとすれば「歩行技術」。軽く見られがちだが、歩くことを技術として考えたいと思った。

八ヶ岳 赤岳雪上訓練

登山というよりも訓練のために参加した。 親睦やピークハントではない。

講習では「教える意図」がとても明確で、何を身に付けてほしいのかがよく伝わってくる。

 

まずは歩行技術。知らないでいたら平らな道を歩くのと同じように斜面を歩いてしまう。しかし、斜面歩行は別物と考える。 そもそも歩くメカニズムとは、

  • 片方の足で立ち 
  • 進む方向へもう片方の足を出し 
  • その足に重心を移動して身体が移動する。 

 

この3つの動作を平地では同時に、斜面ではしっかり分けて行うのである。

 

そして登り斜面に対して斜め方向に(ガニ股に見える)進め、先端のインサイドから着地する。平地と同じように足を出すと、スネのあたりに無理が生じているのがわかる。 これを何千歩も続けたら極疲労で当然。

さらに左右の足と同時に上半身の体重移動も意識する。体重移動というとクライミングを思い出すが、斜面歩行でも同様。 さらに急斜面となると横移動のような足の運びをする。 靴のエッジを使ってステップを小さく切って登るのだ。

 

実際にはこの技術を状況に応じて使い分ける「判断力」が求められる。慣れないうちは、どこに負担がかかっているか意識を体に向け、一カ所に負担がかからないように工夫してゆく。

 

一般の登山で急斜面になると、経験者が「そこ、注意してね」なんて初心者に言ったりするが、注意だけではなく、歩行技術を教えなければ意味がないと思う。 体力と気力だけで登山なんて言うのは一昔前のオハナシ。

 

後半になると、ピッケルとアイゼンを付けて滑落停止、、、かと思いきや、それはほんの5分か10分程度の説明。 一応恰好は教わったが、滑ってすぐに体制が取れなければ意味がなく、滑ってしばらくしてからでは加速の勢いでピッケルが飛ばされるという。

 

それより、転ばない技術をきちんと身に付けること!!

 

特に急な下り坂、横向きで降りるときの足の運びは真横でなく、斜め後ろに足が出るのが自然の動き。それはより安定した姿勢につながる。 そして最初に記した歩行の3つのメカニズムがここでは重要。 谷側の足を出したらまず足場を作るようにする。いきなり体重移動したら、状況によっては足がツルリと滑って危ない。

 

足場を作り、足を置いて、それから上半身の体重移動。この3つの動きを何度も練習した。

 

この歩行技術だけで午後4時間! 薄暗くなるまで続いた。

 

翌日は赤岳へ向かう。

気温はマイナス6℃。 服をどう着るか、山頂付近の強風を意識して目出し帽をどこへしまっておくかを教えられる。 出発前は少し寒いくらいの服装。 つまり「汗をかかない工夫」で、以前なら「汗をかいたら1枚脱げ」なんて言われた。 今は全く逆だ。

 

強風と寒さ対策の目出し帽は、「ザックを降ろさなくても出せる所」にしまう。 加えてゴーグルは最初からつけない(登り途中に付けてる人数名)。 蒸気で前が凍り付いてしまうので、最初はサングラス。

 

 

と、こんな密度の濃い初級者講習であった。「お金を出してまでやるのか、、、」なんて思われたかもしれないが、

充分価値があり、これを実践で生かしていこうと思う。

 

 

西沢渓谷 東沢乙女滝

途中の国道で交通事故の瞬間を目の当たりにしてしまった、、、それだけが理由ではないが遊歩道入り口の神様に手を合わせて沢に入る。 西沢渓谷と言えば、七ツ釜五段の滝を始め多くの滝で有名。入る人も多いせいか、途中のルートには印があるのでそれに沿って行けばよい。しかし、凍った沢の渡渉は慎重にならざるを得ない。

 

急登はないので山歩きほどの負担はないが、滝の取付きまで3時間は大変だ。準備と順番待ちで登り始めたのが11時近くになってしまった。 乙女滝はカチカチに氷ついているが、対岸のナメ滝は春かと思うような流れだ。陽当たりで随分違うものだと思う。

 

1ピッチ目で50m登攀。スクリューをスムーズに打ち込めるかがカギのようだ。傾斜が寝ているので、登攀自体はさほど難しくはない(沢登りとなると上級クラスへグレードUPするが)。前回、自分はスリップして確保されたのでそれはないようにして登る。 

 

 その後は長短3ピッチの滝を詰めてゆくと、80m滝が目の前に現れた。長さも幅もスケールが違う!! いつか登ってみたいと思うが今回は時間切れ。樹木をアンカーにして懸垂下降を繰り返して下に降りてきた。  2本のロープを絡まずに扱えるようにしたい。